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アーティストでも解る ゲームグラフィックの仕組み~第1回~

はじめまして!野島亮と申します。

普段は3DCGアーティストとして家庭用ゲームの開発を行う傍らでライター活動もしています。
『月刊CGWORLD』でたまにゲームメイキング記事の執筆を担当させて頂くことがあります。
このたび、トリクリブログでも寄稿させて頂くことになりました。
よろしくお願いします!

トリクリブログで担当させて頂くのは、主に家庭用ゲーム開発における技術的な部分の解説になります。
ツールのTIPSとかアートワークの話ではなく、リアルタイムでのグラフィックの仕組みに焦点をあてて、アーティスト向けにとにかく分かりやすさ重視でトコトン噛み砕いた解説をしたいと思っています。
なんとなく難しそう‥」なことを「なんとなく分かった!」と思ってもらうのがコンセプトですが、正確では無いことを書いてしまっている可能性もあります。そんな時にはぜひツッコミいただければ幸いです。
それから、そのうちもしかしたら直接開発とは関係の無い話についても触れる機会があるかも知れません。

さて、私が最初に取り上げるのはPlayStation®4のような家庭用ゲーム機のデータの流れになります。 グラフィックの仕組みについて知るためには、ハードディスク、メモリ、CPUとGPUについて最低限のことを知っておく必要があります。
すでにご存じの方は、新人の子に教える時の参考に読んでいただければと思います。

まずは下の図を見てみてください。
この机と人がゲーム機を表しています。

図の引き出しは「ハードディスク(HDD)」でデータを格納しておくところです。
机の上は「メモリ」で、今必要なデータを置いたり、データを書き込んだりするところです。

ゲーム機のイメージ図

作業している人の頭の中が「CPU」で、データのやり取りを命令したり計算をします。
作業している人の右手が「GPU」で、絵を描くことに特化しています。

ではデータの流れはどのような感じでしょうか?
ブルーレイディスク(Blu-ray Disc)やゲーム機のHDD から、ゲームに必要な情報をメモリに読み込みます。
これが「ロード」です。
この図で言えば、必要なものを引き出しから取り出して机の上に並べるイメージです。
何を引き出しから取り出して、どんな絵を描くかは頭(CPU)で考えて命令を出し、実行します。
そして右手(GPU)は命令に沿ってメモリ内にあるキャンバスの領域(フレームバッファ)に絵を描いていきます。
最終的に描き終えて完成した絵は、ディスプレイに表示されます。絵を描いてディスプレイに表示する‥というのを1 秒間に30 回とか60 回とか常に繰り返し続けている訳ですね。

この図で言うところの、引き出しの収納量・机の広さ・キャンバスの大きさ・頭の回転の速さ・右手の描くスピードといったあたりがハードの「スペック(能力)」の部分であり、例えば頭の回転が非常に速くても右手の描く速度が遅ければバランスの悪いスペックであるというのは想像しやすいですよね。

さらに補足していきます。

引き出し=ハードディスクについて

今時のゲーム機はハードディスク(HDD)を備えています。
ゲームのデータはBlu-ray Disc に収まっていますが、そのデータをHDD にコピーすれば、Blu-ray Discから直接データを読み込むよりもHDD から読み込む方が速くなります。また、HDD にはダウンロードしたデータを保存したり、ゲームのプレイの様子を録画したものが保存されたりします。

ちなみにPS4 やXboxOne ではBlu-ray Disc を入れてゲームを開始するとHDD へのフルインストールが始まり、HDD からデータを読み込む‥という仕様になっています。
PS3 からPS4 になってハードの性能が一気に上がりました。しかし、データの読み込み速度はそれほど上がっていないため、何も考えずスペックに合わせてそのままゴージャスに作るとロードにすごく時間のかかるゲームになってしまうという落とし穴があります。

期待されたタイトルが発売後にロードに1 分かかることが判明すると、ネット上では批判の声が大きく上がります。遊ぶ人にとって1 分待たされるというのはかなりのストレスなのでそれは当然です。
なので、ロード時間が長くならないよう、また長く感じないような工夫が求められますし、それはアーティストの作業にも直接響いてくる問題です。

机の上=メモリについて

PS3 以前は「メモリ」に関して、メインメモリビデオメモリ(VRAM)の2 つにきっちり分けて考える必要がありました。下の図のようなイメージです。

メインメモリとビデオメモリ(VRAM)

ビデオメモリというのは、ディスプレイに表示する絵を描くキャンバスの領域であったり、キャンバスに絵を描くのに必要なテクスチャを置いたり3D モデルの頂点情報を置いておいたりするための専用の領域です。
しかし現行機であるPS4 やXboxOne はメインメモリとビデオメモリに分かれておらず、共有され自由に扱える形になっており、ユニファイド・メモリと呼ばれます。
http://pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/591/321/html/1.jpg.html
<「後藤弘茂のWeekly 海外ニュース | PlayStation 4 の大きなアドバンテージは8GB の大容量メモリ」より>

もしもゲームの全データがメモリに載ってしまう量なら、全データ分のロード完了には時間がかかるでしょうけれど、その後は全く読み込みが発生しない快適なプレイ環境を提供することができるでしょう。

今回はここまでになります。

いかがでしょうか?
メモリとかCPU とかよく分からなかったけど何となく分かった!」と思って頂けたなら嬉しく思います。

また、こういったゲーム機のハードウェア周りやグラフィックの仕組みについてアーティストにも理解で
きるようとても分かり易く解説されている本がこちら。

ゲームを動かす技術と発想
https://www.amazon.co.jp/dp/4797370122

株式会社ロジカルビート代表の堂前嘉樹さんにより執筆されており、大変オススメですので興味のある方
はぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。

それでは、次回もどうかよろしくお願いします!

野島亮

ライター:野島亮

普段は3DCGアーティストとして家庭用ゲームの開発を行う傍らでライター活動も行う。
『月刊CGWORLD』でたまにゲームメイキング記事の執筆を担当。

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