フリーランスが仕事をするときに締結する業務委託契約とは? 前編

フリーランスもしくは個人事業主の方が、仕事を受ける時に締結するのが業務委託契約です。では、この業務委託契約とは何でしょうか。

業務委託契約書を見て、その文章量に圧倒されて、中身を確認せずにサインしてしまっている方も多いと思います。クリエイティブな作業とは異なるところなので、それも仕方ないことなのですが、できれば中身も確認した上で契約したいものですね。

今回はフリーランスの方に向けて、業務委託契約について説明します。前編では業務委託契約の概要と委任契約と請負契約の違いを、後編では業務委託契約書の内容について注意すべき点について記載します。

民法で定められている13種類の典型契約

民法では13種類の典型契約が定められています。この場合の典型とは「典型的な日本人」という言葉と同じ意味で、契約の代表的な例となるものです。

  • 贈与
  • 売買
  • 交換
  • 消費貸借
  • 使用貸借
  • 賃貸借
  • 雇傭(雇用)
  • 請負
  • 委任
  • 寄託
  • 組合
  • 終身定期金
  • 和解

上記の13種類が民法で定められている典型契約です。

※雇傭の「傭」は常用漢字でないため、以下は雇用と記載します。

この中で労務に関する契約は雇用、委任、請負です。雇用契約は噛み砕いて説明すると、雇用主である会社と使用者(社員からアルバイトまでを含む)との契約ですので、フリーランスの方が仕事を受けるときに締結するのは、基本的に委任契約か請負契約かのどちらかになります。

請負契約と委任契約の違いとは?

請負契約とは、受注者が仕事の完成を約束し、発注者がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約です。フリーランスが仕事を受ける場合、ほとんどのケースでこの請負契約を締結することになるでしょう。

一方の委任契約は、仕事の完成ではなく仕事のプロセスに対して責任を負う契約です。代表的な例だと、医師と患者との間には委任契約が成立するといわれます。

患者の治療に関して医師は善良な管理者の立場から、患者を治療するという義務を負います。これを善管注意義務といいます。ところが医師が全力を尽くして治療にあたったとしても、患者の病気が治るとは限りません。そのため医師と患者の関係は、仕事の結果に対して責任を負う請負契約ではなく、仕事のプロセスに対して責任を負う委任契約になるのです。

※正確には法律を扱うものを委任契約、それ以外を準委任契約と呼称するのですが、本記事では、どちらもまとめて委任契約と記載します。

職種によってはフリーランスでも委託契約になる

フリーランスでも委任契約を締結することはあります。たとえば校正やデバッグという仕事は委任契約になることが多いようです。

校正やデバッグは、成果物を完成させて納品するタイプの仕事ではありません。既に完成された成果物に対して、問題がないかチェックする仕事になります。仕事の完成に対して責任を負うのではなく、仕事のプロセスに対して責任を負うのです。

仕事のプロセスに対して責任を負うから責任が軽い、という訳ではもちろんありません。医師や弁護士の仕事も委任契約になりますが、責任が軽いと考える人は誰も居ないでしょう。校正やデバッグといった仕事も、その業務において最善を尽くす必要があるのです。

フリーランスの業務委託契約はほとんどが請負契約

フリーランスがクライアントと締結する契約はほとんどが請負契約になるでしょう。前述したように一部の職種では委任契約になることもありますが、企業側から見た場合、成果物が定められていたほうが仕事が進めやすいことがその理由です。

  • デザイナーがWebページを作成
  • プログラマーが生産管理システムを納品
  • ライターが求人原稿を執筆

たとえば上記の仕事だと、それぞれ納品するものが決まっています。

  • Webページ
  • 生産管理システム
  • 求人原稿

これらが仕事の成果物になるので、これらを完成させて納品することで対価を得ることになります。

さて、前編では業務委託契約の概要と委任契約と請負契約の違いについて説明させていただきました。後編では、フリーランスが業務委託契約を結ぶときに注意すべき点について解説します。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。