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人気プロレスゲーム「WWE」シリーズなど制作!株式会社ユークス様(大阪・横浜)

個性あふれるゲーム制作会社を訪問し、会社の裏側からゲームの裏側に至るまで、さまざまな話をおうかがいする『トリクリ塾 ゲーム会社訪問編』。第3回となる今回は、『WWE』や『UFC』などのプロレスゲームを中心としたゲーム開発を行っている株式会社ユークス様を訪問しました。

株式会社ユークスのシニアテクニカルディレクター Mさん、WWEチームのアートディレクター Oさん、同チームのチーフプログラマ Iさんにお話をうかがいました。

みなさんが担当している「WWE2K18」というゲームについて教えてください

Mさん:「WWE2K18」は、アメリカに実在する「WWE」というプロレス団体を題材にした、3Dプロレスアクションゲームです。
2000年に最初のタイトルを発売してから18年間、1年に1回のペースで毎年リリースをしていて、今年で19作目になります。シリーズの累計売上本数は6000万本以上です。
WWEは全世界で放送されていて、このゲームも現在、6カ国語へのローカライズ対応もしています。

2016年に発売された「WWE2K17」

みなさんの担当している仕事について教えてください

Mさん:私の役割は、技術的な要件を決めることです。
たとえば、新しい技術を取り入れるときに、どのように実現するか、どうやって納期に間に合わせるか、などの課題を解決することが仕事です。
横浜開発室、大阪、ロサンゼルスの拠点にいる100名以上のスタッフをマネジメントしています。

Oさん:私は、WWEのゲーム全般のアニメーション制作を担当しています。
具体的には、3Dキャラクターを操作したときの動きやオブジェクト、ギミックのアニメーションです。

Iさん:私は、WWEのゲームの対戦システムや、AIのプログラム作成をしています。

WWEを担当する上での、仕事のやりがいを教えてください

Oさん:WWEに登場するキャラクターはみんな、実在するスーパースターで、熱狂的なファンが存在します。(WWEではレスラーのことを「スーパースター」と呼称します)。そういったファンの期待に応えるように、キャラクターや技のリアルさを追求しながらも、ゲームならではのカッコよさも実現することが面白さでもあり、大変な点です。

リアルさを追求するという点で行っていることは、ゲームの中でキャラクターが繰り出す技や動きの再現です。
具体的には、インディーズのレスラーにモーションキャプチャーをつけて技を再現してもらい、その動きを加工してゲームに活かすなど、リアリティを追及しています。
ただ、モーションキャプチャーのスーツを着ている動きと、実際の試合で大勢の観客の前で行う技だと、迫力が違うんです。
そのため、モーションキャプチャーの動きをさらに洗練させ、ダイナミックで迫力のあるものに加工し、さらにゲーム的なカッコよさを演出しています。

私は、ユークスに入社して14年間、このWWEを担当しています。
その間に、ゲームやCGの技術はどんどん進化して、最近は実写と変わらないクオリティが求められます。
たとえば、キャラクターの瞳の動きひとつとっても、昔はそこまで動きがなかったのですが、今ではまばたきまでハッキリと見える。
こういった細かな仕草にもキャラクターの個性が出ますので、細部まで仕上げて、ゲームの世界観を作り上げる必要があるんです。

Iさん:WWEを担当する面白さでもあり、大変さでもあるのは、毎年新しいバージョンをリリースする際に、去年のゲームを超える必要があることです。
どんどんゲーム機のスペックが上がっていますので、今までできなかった技術を実現できるようになっています。
先ほどOがお話ししたように、キャラクターの動きもどんどん細かく、リアリティが求められている。
プログラマは、デザイナーやモデラーが作った細かなデータがきちんとゲーム上で表現できるように、対応していく必要があります。

また、現実のスーパースターが新しい技を出したら、ゲーム側でも新しい技として追加していきます。
毎年どんどん新しい技が増えていくので、どのような新しい技が追加されても問題なく動くようにすることが、プログラマの腕の見せ所でもあります。

Mさん: 前年のゲームを超えることは、WWEシリーズを担当する上での重要な命題です。
毎年、新しい要素を追加していますので、新しい技術の調査をするのは大変ですね。
たとえば、映画で見かけた新しい技術を取り入れるためには、ソフトウェアの検証を行って、データやプログラムを作っていく。
年に1回という納期が決まっている中で、いかにしてゲームのクオリティレベルを上げていくかということに、日々向き合っています。
 

大変だったな、と印象に残っているエピソードを教えてください

Oさん:プロレス団体のWWEは、毎年1回8万人もの観客が集める「レッスルマニア」という大規模な試合を行います。
レッスルマニアは年に一度のお祭りなので、その日にスーパースターたちは次々と新技を繰り出すんです。

WWEのファンでもある私たちにとっては、とても熱狂する瞬間なのですが、同時にゲーム制作者としては、新しい技をみて「あ゛――!」とショックを受けたりもしています(笑)
なぜかというと、その新しい技をゲームに取り込んでいかないといけないからです。
スゴイ技だ!と興奮する一方で、「あの技をどうゲームに取り込んだらいいんだろう・・・」と途方にくれたこともあります。

今までで1番大変だったのはWWEの試合で実際に起きた「リング崩壊」という出来事。
重量級のスーパースターがコーナーから投げられたところ、衝撃でリングが崩壊してしまったんです。
その動きを再現することになりました。

Mさん:ちょっと古いたとえですが、ドリフターズのコントのように見事に、リングが壊れました(笑)
ゲームでは、もちろんリングが壊れることを想定して作っていませんので、リング崩壊を再現するのは、大変な作業でした。

まず、こわれたリングのアニメーションを作った上で、一瞬でアニメーションが切り替わるようにプログラムを動かす必要があります。
さらに、リングが崩壊する瞬間にエプロン(プロレスのリングの端)が揺れる、など細かい動きも表現する必要がありました。

Iさん:リング崩壊をはじめて再現したときも大変だったのですが、その後もリングモデルのバリエーションが増えているので、それぞれに壊れるという仕組みをいれていくことになります。
このように、ゲームを楽しんでもらえる工夫が増える度に、プログラムの負荷も増えていくんです。

最近は物理シミュレーションを使っているので、以前に比べると、新しい技を実装までの時間を短縮することができるようになりました。
ただ、昔に作ったデータも残っているので、そこはまた対応が必要になります。
物理エンジンに対応するようにバージョンアップも行っています。
 

ワールドワイドに展開するゲームならではのエピソードを教えてください

Mさん:WWEは実在するアメリカのプロレス団体なので、日本のゲームっぽさが出ないように気をつけています。
初期の頃は、どうしても日本のゲームっぽさが出てしまい、インターフェイスを北米の人に好まれるものを取り入れるなど、苦労しました。

Oさん:色の明るさの調整でしょうか。
実は、色の感じ方は、ユーザーの瞳の色によって違うんです。
日本人の瞳で見てちょうどいいと感じる明るさは、瞳の色が明るい外国のユーザーからは明るすぎると思われてしまうので、明るさの調整を行っています。

Iさん:最近、アラビア語へのローカライズをしたのですが、実はアラビア語は左からではなく右から文字を読むんです。
そのため、レイアウトをひっくり返せるように対応をしました。

長く続いているシリーズだからこそ、工夫している点はありますか?

Oさん:ツールやエンジンなど、開発の環境を常にバージョンアップするようにしています。
どんな要望にも応えられるような環境を、R&Dチームが担当してくれているんです。
また、1年という納期が決まっているので、納期を守りつつ新しい技術を実現するために、業務フローの改善も日々行っています。

Iさん:プログラマは、ツールなどを作ることで、業務効率の改善をはかっています。
先ほどお話したように、ゲームデータはどんどん多くなっているので、既存のデータの修正には時間をかけずに、新しい要素に集中して取り組める環境をつくっておく必要があるんです。
たとえるなら、注文が入ってから調理をするシェフではなくて、何でも選べるようにビュッフェ形式で料理を準備しておく、といったところでしょうか。
そうすれば、どんな要望があっても、スムーズに応えられますよね。

エンジニアとしては、アニメーターやプランナーから要望があったとき難しい要望だったとしても、「できない」と言わず、“どうやったらできるか、どうすればやりたいことに近づけるか”というスタンスでいたいと思っています。

Mさん:継続しているタイトルなので、開発も継続して行うことができ、難しい要望でも、いつかやり遂げられるという良さがあると思います。
たとえば、ある要望をかなえたかったけど、技術的に100%かなえることが今年は難しかったとします。
それでも、次の年にやり遂げれば、自分たちが作りたかったゲームにどんどん近づきますよね。
自分たちの作りたい理想のゲームを作り続けられる面白さがあると思います。

最新の技術は、どのようにして取り入れていますか?

Oさん:当社はアメリカのLAにもオフィスがあるので、そこから常に最新の情報を集めています。
WWEはワールドワイドに展開しているので、比較されるゲームもビッグタイトルばかりです。
そのため、常に高い技術を要求されているという心づもりで仕事をしています。

たとえば、現在使用している物理シミュレーションの一部は自社製です。
元々は外部の会社が提供しているソフトを使っていたのですが、WWEの世界観を表現しきれなかったので、R&DチームがWWE専用のクロスエンジンをつくったんです。

Mさん:髪の毛の動きを例にすると、一般的にはヒラヒラとなびくくらいで十分なのですが、WWEの場合は、スーパースターがさかさまになったり、殴り合いをしたりするので、多様な髪の毛の動きを表現する必要があります。ヘアースタイルも様々です。長髪、短髪、女性もアフロもいます。

最新技術を取り入れるときに意識しているのは、「次にこれがきそう」というものをいち早く取り入れて、流行の先を追っていくことです。
技術の動きは早いので、今流行っているものを取り入れても、ゲームをリリースする頃には当たり前になっています。
そのため、R&Dチームがいち早く情報を仕入れ、ほかのゲームとの差別化を考え、それを開発チームが実際のゲームに取り入れています。

Iさん:こうした最新技術が結集しているのが、入場シーンです。
全方位からスーパースターにライトが当たったり、暗い会場で花火があがったりなどの演出があります。
光がどうキャラクターにあたるか、反射するかなども相当作り込んでいますので、ぜひ注目してください。

転職してきた人が、驚くことはありますか?

Oさん:アニメーションの部分でいうと、キャラクターが組み合っている動きを表現する難しさを感じる人が多いです。
一般的なゲームはキャラクター一体で完結する動きが多いからだと思います。

また、職種の垣根がないことに驚く人は多いです。
ユークスでは、ゲームをよくするためなら、アニメーターも仕様の部分までどんどん入っていき、意見を言います。
アニメーションだけでなくゲームそのものを作っている、という実感をもてると思います。

Iさん:ゲームのリリースが年に1度なので仕事のスパンが長いこと、先ほどお話ししたように、プログラムの量が多いことに驚く人が多いです。
また、格闘ゲームではなくプロレスゲームなので、ただ相手を倒せばいいわけではなく、この場面では攻撃を受けなくてはいけない、などと考えたりするのことが面白く感じてもらえるようです。

Mさん:「みんなでゲームを作り上げている実感がある」という声を聞いたことがありますね。
たとえば、座席は職種ごとではなくチームごとに分かれているので、プランナー、デザイナー、プログラマが隣同士に座っているんです。
チームで近くに座っていれば、できあがったものをすぐチームみんなで見て、意見をフィードバックし、すぐ改善していけるからです。
そういった雰囲気が、ユークスらしさだと思います。

ユニークな社内制度があるそうですが、実際に利用してよかったものはありますか?

Oさん:海外研修制度は、とてもよかったです!
先ほどお話しした、年に1回行われるレッスルマニアを、本場のアメリカで観戦してきました!
アメリカでも入手困難なチケットなので、とても貴重な体験でした。
新技を見て、頭を抱えてはいましたが・・・(笑)

Iさん:私も海外研修でレッスルマニアに行き、貴重な経験をしました。
それ以外にプログラマとしてうれしく感じる点は、勉強会への参加を奨励してくれること。
地方などで行われる勉強会でも申請すれば行くことが出来るので、活用しています。

Mさん:制度ではないですが、まとまった休みがとりやすいと思います。
WWEのチームは、毎年6~8月がプロジェクトの佳境なので、プロジェクトがひと段落する10月や11月、年末などにまとまった休日をとることができます。

受付フロアにある歴代のWWEシリーズパッケージと様々な受賞トロフィー

どんな人と一緒に働きたいですか?

Mさん:最新の技術をどんどん取り入れていますので、新しい技術に興味がある人にきてほしいです。
ゲームだけでなく、映画やアニメなどの最新CG技術に興味のある人が楽しめる職場だと思います。

Oさん:WWEのアニメーターは、さまざまな人の動きを実現する必要がありますので、人間の動きをリアルに表現できる人にきてほしいです。
ソフトやツールの知識は後からついてきますので、最初からくわしくなくても大丈夫。
それと、オタク気質で好きなモノにのめり込むタイプの人が向いていると思います。

Iさん:同僚は「私はこれが好きなんだ」と強くアピールできる人が多いので、そういった人が向いていると思います。
きっと、WWEにも強い興味を持ってくれるはず。
私も最初はまったくプロレスに興味がなかったのですが、今日着ている服はWWEのグッズというくらい、ハマっています(笑)
また、ユークスは、様々なプロジェクトや、R&Dチームがあって最新技術研究にも取り組んでいます。
私は学生時代からやりたかったAIに取り組めていますし、やりたいことや、様々なことを実現できる会社だと思います。

取材後記

取材をさせていただいた皆さんが、目を輝かせながらゲームやプロレスのお話をしてくださったのがとても印象的でした。
長く愛されるゲームを生み出し続ける原動力が、新しい技術へのチャレンジと、タイトルへの愛であることが実感した取材でした。
後日談として、みなさんのプロレス愛に圧倒され、思わずプロレス団体「WWE」の公式動画をチェックしてしまいました(笑)
ユークスの皆様、ありがとうございました!

取材・文: 池田 小花(Little Spice)

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